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2020年2月〜3月、世界中の市場は新型コロナウイルスの衝撃で大混乱に。
各国の中央銀行は為替介入を行って対応しますが、その国の外貨準備高が豊富にあるかないかで介入が十分に行われるかが別れます。
通常、先進国は新興国に比べて外貨準備が整っており、新興国は今回のコロナショックにより通貨の下落を抑えられずに窮地に陥っています。
そんな中、新興国とは逆の現象で中央銀行が頭を悩ませている国があります。
それがスイスです。
スイスはスイスフランの上昇を押し止めるため介入を行っていますが、それが限界に来ている可能性があります。
まりえ
スイスフランショックってなあに?
2015年1月15日、スイス国立銀行の予想外の政策変更の発表によりスイスフランを中心とする為替相場が大混乱に陥った出来事のこと。
歯止めの効かないスイスフラン高
スイスフランはギリシャショックを発端とする欧州債務危機により、歯止めの効かないスイスフラン高に悩まされていました。
極端なスイスフラン高によるスイス国内の景気悪化を恐れたスイス国立銀行は、スイスフラン売りによる介入を行います。
ユーロ/スイスフランが1.2フランを下回らせないために、強力な介入を3年以上に渡って敢行。
それを知っていた投資家たちには、「ユーロ/スイスフランが1.2フラン付近に近づくと買いで入る」という手法が聖杯と化していました。
ついに限界を迎えます。
2015年1月15日、突然「永続的に介入することを止めた」と発表。
これにより市場は混乱、たった20分でユーロ/スイスフランは3800pipsも急落したのでした。
まりえ
コロナの世界的蔓延によりスイスフランが上昇
さて、「あのスイスフランショックがまた起こるのでは?」と噂が…。
というのもコロナ問題でスイスフラン高が止まらないからです。
”安全資産”のスイスフラン
スイスは”永世中立国”って有名ですよね。
EUからも距離を置いており、ユーロを導入せずに独自通貨のスイスフランを流通させていることから”安全資産”としてみなされています。
そのため軍事的緊張や地政学リスクが高まると、株や不動産といったリスク資産が売られ、それがスイスに流れ込む傾向があります。
コロナの世界的蔓延も例外ではありません。
リスク資産は売り込まれ、スイスに逃げ込む傾向を見せました。
さらにスイスフラン高をエスカレートさせているのが欧州の現状
欧州諸国はドイツなどの強国を除き、欧州債務危機からまだ立ち直れていません。
イタリアはGDPが2008年のレベルには今も戻れず、ギリシャはほとんど立ち直っていません。
南欧の諸国の債務が特に多いため、ユーロが大幅下がっています。
これがユーロ/スイスフランの下落を助長させているんですね。
まりえ
そのため、リスク資産からマネーが引き上げられ、スイスへと流入しているのです。
必死の介入でスイスフラン高を食い止めようとするスイス国立銀行
ここ数年、1ユーロ=1.05スイスフランを防衛ラインとして介入を行っています。
かつて防衛ラインを守り切れなくなりスイスフランショックが起こりましたが、今度はどうなるのでしょうか。
しかし、対ユーロでのスイスフラン高はとどまることを知らず、スイス国立銀行はユーロを無限に買い続けなければいけない状況に置かれています。
外貨を買い続けたことによってスイスの2020年第一四半期の為替差損は実に390億ドルに。
スイス国立銀行のヨルダン総裁は、スイスフランの1.05ラインについて以下のように発言しています。
「対ユーロで具体的な防衛ラインはない。
スイス国立銀行はその責務を果たす上でも判断を下す上でもあらゆる通貨の動向を考慮する。」
スイスフランショックの経験から、あからさまなラインを引くことはスイスフランにとっても良くないことからの発言ではありますが、スイス中銀がユーロを無視できないのは明らかです。
コロナの影響でスイスフランショックの再来はある?
まずは2020年のユーロ/スイスフランのチャートを見てみましょう。
コロナショックが起こってから防衛ラインの1.05フランまで近づき、4月から5月にかけては防衛ラインのギリギリのところまでスイスフラン高が進んでいます。
その後ユーロ高方向に上昇。
今は1ユーロ=1.07スイスフランの水準で推移しています。
5月当時、スイス国立銀行のヨルダン総裁は
「コロナ危機によって生じたスイスフラン建て資産への資金流入によって、我々はスイスフランへのプレッシャーを減らすべく為替市場で活発なオペレーションを行っている。
中銀はトレーディングの詳細は決して明かさないが、大規模に動いていることだけは強調したい。」
中銀がコロナ危機によるスイスフラン高を阻止すべく、大規模な介入を行っていたことを言っています。
1.05ラインを阻止すべくユーロ買いを入れていたことを推しはかってしまいますね。
今後コロナが収束していけば問題ありません。
でも再びウイルスの蔓延により世界各国、特にユーロ圏でロックダウンなどの経済リスクが上がったら、再びスイスフランは1.05ラインに近づく可能性があります。
そのときにスイス国立銀行の余力がなくなると、スイスフランショックの再来が来ないとも言い切れません。
ユーロ安スイスフラン高懸念は払しょくしきれていない
今後スイスフランショックが再来するかどうかはまだ分かりません。
でもハッキリしているのは、ユーロ圏の状況が不安なのでスイスフラン高圧力があること。
コロナが冬に向けて再び巻き起こり、経済不安が懸念された場合、再び1.05ラインまで近づく可能性があり、そうなった場合、スイス国立銀行は介入でラインを割り込まないように動くものと思われます。
ですがもしラインでの攻防が長引いたら、2015年と同じようにギブアップ宣言をする可能性がないとも言い切れません。
以上のことを頭に入れて、十分に注意してトレードしましょう。